七 転 八 倒

笑って許してやってくれっ… 寛容な精神で…!

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ふう…

バトロワSS6本目。アカギ、カイジ、沙織。

※注意※
SS=サイドストーリーのこと。
バトルロワイアルSSなのでキャラ同志が殺し合いしてます、苦手な人注意。
以下反転で読めます。リレーSSなのでこれだけだと良くワカランと思います。
興味もたれた方はまとめサイトへ…
http://www31.atwiki.jp/fukumotoroyale/

「陰陽」

***1

月。 満月。
光は降り注ぎ、木々の下に影を作る。
月明かりを頼りに、また月明かりのためにできた影にひっそりと紛れ、足音を立てぬよう歩く一組の男女。
沈黙。時折、微かに風が葉を揺する音。

「…大丈夫?」
周囲を気にして、小声で女のほうが男に話しかける。
男のほうは、相手にはっきりと伝わるよう心がけながら頷いた。

左足の傷は痛むが、なんとか歩行はできる状態である。
ただ…今の状況、ずっと外を歩き回る現状、できれば早く手当てをしたい。

沙織とカイジの二人は元いたアトラクションゾーンから離れ、禁止エリアのホテルを右側から迂回するように南下していた。
二人はバトルロワイアル…この馬鹿げたゲームが始まってからこっち、アトラクションゾーン周辺からあまり移動していない。
近くが禁止エリアとなったのでできるだけ離れるため、また、つい先ほど経験した忌まわしい事件の感触から逃れたいために、
足を踏み入れていない地区のほうへと歩いていたのだった。
歩いているうちにそれなりの隠れ家…身を隠し、一時的にでも休むための場所が見つかるかもしれないという希望を胸に。

道中、行く先を決めたのは沙織だった。
彼女は、どこか吹っ切れたようだった。一種の諦観というべきか。
ただ守られることだけを考え怯えるのではなく、生きるために、その可能性を少しでも高めるために行動する、
その決意は背中から、また歩き方からもはっきりと伝わってきた。

方針を決めたのはカイジだった。
仲間を増やす、そのためには無茶な行動に出るのではなく、相手をよく観察して慎重に行動する。
…もし敵…また有賀のようなマーダーに出会ったら二人で退治…する…。

***2

(……いや、退治じゃない。ごまかすな)
カイジは、心の中でさえぼかした表現を使おうとする自分に苛立った。

(殺人だ。人殺しだ。言い逃れはできない)
言い訳などできぬ。自分に嘘をつき続けることなどできないのだから。

有賀の荷物の中にあった果物ナイフが上着のポケットに入っている。
その武器がいつか血に染まることがあるかもしれない。
おそらく…、日がたつにつれ、禁止エリアは拡大し、逃げ場は少なくなっていくのだろう。
そして、…その時出会うは猛者…。一日でも長く生き延びてきた突破者っ…!
仲間になってくれるとは限らない。有賀のような者と、これから先何人遭遇するか知れぬ。
だから、覚悟を決めなければ。自身の目的のため…。主催者との戦い、圧倒的勝利っ…!その末に、
『少しでも多くの人間が生き残る』ために…!

ふと胸騒ぎがした。気配。
茂みからアトラクションゾーンの方向に目をやった。

人だ。
アトラクションゾーンの大通りを歩いている…!
カイジは目を瞠った。

人が歩く、そのこと自体は本来、全く驚くに値しないこと。問題は、どのように歩いているのか、だ。
その人物は、『無造作に』歩いていた。
月光を浴び、大通りの中央を堂々と。いつどこから狙撃されてもおかしくない、このゲームの中で。
一瞬頭がおかしいのかと疑った。もしくは、投げやりになっているのかと。
…だが、そういう風には見えない。否、少しぶっ飛んでいるのは間違いがないが、ただ壊れているという感じがしない。何かが違う。
なんというか…、元々こういうゲームの中に身をおいて生活してきたような…、
殺されるかも知れぬという状況が最早日常になっている、そんな風に見えた。
参加する以前から、『すでに覚悟を決めている』、…そんな風に。

***3

「カイジ君、あれ…」
沙織も気がつき、カイジに囁いた。

「赤木しげるじゃない?今度こそ本物の…」
そう言われてようやく気がついた。年恰好、白い髪。むしろ何故気づかなかったのか。
…写真ではわからない、独特の雰囲気があった。生身の「本物」には。

「……危険人物…、第一級の…」
沙織が小さくつぶやく。
「……ああ、でも……」
二人は茂みに隠れたまま顔を見合わせた。
沙織も困惑したようにカイジを見、また赤木のほうに目を向ける。
有賀のようなマーダーを想像していたのだ。若しくは知性を以って人を見下す利根川や一条のような。

ふ、と赤木しげるの横顔がこちらを向いた。
「…!」

目が合った。互いにだいぶ距離があったが、はっきりとわかった。
合ったにもかかわらず、赤木は僅かに目を細めただけで、何事もなかったかのようにまた前を向き真っ直ぐに歩き出した。
しばらく呆然として赤木の背中を見送っていたカイジだが、ハッと我に返り、次の瞬間には茂みから飛び出していた。
沙織が制止しようとする暇もなかった。
遠くから狙撃される危険を警戒することも、足の痛みも、その一瞬だけ忘れた。

「ま…、待ってくれ…!」
赤木しげるの背中に声をかけた。赤木は立ち止まり、ゆっくりとこちらを向いた。

「アンタ、赤木…、赤木しげるだろっ…!」
アカギは答えない。沈黙は肯定だった。

***4

「…あの、」
何を言えばいいのか迷った。
『大通りの真ん中を歩いていたら危ない』と言おうかとも思ったが、そんなこと本人が一番分かっているだろう。
無造作に歩いているように見えて、気を緩めてはいない。だからこそ、遠くで様子を伺うこっちの気配に気がついたのだから。
偶然などではない…

「……あの…、仲間になってくれないか?」
やや上ずった声で、単刀直入に言った。

「断る」
アカギはあっさり言い放った。
「…そうか」
カイジは一瞬固まったが、ふっと小さく息をついた。その顔にさほど落胆の色は見えなかった。
「……そんな気がした」
その言葉に、アカギは僅かに口の端を持ち上げた。

「だが、取引ならいい」
「…取引?」
「アンタには聞きたいことが山ほどあるんだ」
「……あ?」
その言葉にカイジは驚いた。

「……知ってるのか、オレの事っ…?」
「いや、全然…。ただ、アンタ、開会式で目立ってたんで憶えていた」
「………でも、じゃあ何を聞くことがあるってん…」
「アンタ、初めてじゃないだろう、こういうの」



カイジは目を見開いた。
「…なんでそう思う…?」

***5

アカギは語りだした。
「理由は…このゲームの幕開け…開会式での一件だ…。
一人の男の首輪が爆発した…あの時だ。首輪が爆発する『前』に、アンタ、何かを察していただろう」
「…………?」

「オレは、首輪が爆発するまで、予感はしたものの、何が起こるかまでは正確な予想はできなかった。
おそらくあの場にいた大半がそのはずだ。
アンタがあの山口という男の発言を制止しようとしたとき…。ただ単に、奴ら…主催の機嫌を損ねるのは得策じゃない、穏便に、
なんて理由で山口を止めにかかっていたわけじゃあなかった…。
今この瞬間にも、危害を加えられる…あっさり殺される、こいつらはそれくらいやる…そういう確信があったんじゃないか…?
だから焦り、慌てて止めようとした。
主催から『皆様に殺し合いをしていただきます』などと宣言されたばかりで…
参加者の大勢が面食らい、また緊張し、呆然としていたあの時に。」
「……………」

「……そして、あの場にいた参加者の数名は、首輪が爆破した山口を見ても驚愕の色を見せなかった。
おそらくそいつらは関係者…。何をやらかして参加者に落とされているのかは知らないが、
元々は主催の組織の内部にいた者…。
だから、主催の人殺し…、それを見ても動じなかったんだ。
だが、アンタは別…、おそらく、今までも『関係者』でなく『参加者』…、理不尽を強いられる側だったはず…。」
「……………」

「だからあの涙…。
混乱と不安と焦燥の中、大勢が固まったまま動けない中、死ぬ者を見て同情する『余裕』すらあったのは、
以前にも同じような状況で、同じ立場のものが殺されるという経験があったから…。違うかい」

***6


木の葉が揺れる。


     ざわ…
              ざわ…


胸の奥がざわめく。


           ざわ…
                    ざわ…


  ざざざ…



「……で、取引と言うのは」
「ちょっと待ってくれ」
カイジが遮った。

「アンタは…? アカギ…アンタは……、『何』なんだ……?」
「………何と答えれば満足だ?」
「………。 どっちだ?」
「どちらでもないさ」
「…でも、『向かう先』は同じだろう……」
「何だ…。分かってるんじゃねえか」
アカギは薄く笑う。その人を食ったような態度が腹立だしい。思わず舌打ちする。

***7

「チッ………取引って…何だよ?」
「…オレが欲しいのは情報…。アンタの持つ情報…。」
「………勿体つけて、単に情報交換したいって話かよっ…」
「いや、取引だ。だからアンタからも要求すればいい」
「……………要求なら、オレはもう言ってる」
「そう。わかった」

アカギがあっさりと言い、カイジはますます憮然とした表情をつくる。
「何だよアンタ…断ったり、承諾してみたりよっ…!」
「取引としてならいい。だが、別行動が前提だ」

カイジはその言葉を聞いて、急にニヤリと笑う。
「それで構わねえさ。別に同行してくれなくったっていい。そっちにはそっちの都合があるだろうしな…!
というかアンタと一緒に行動したらこっちが落ち着かねえ、誰かに狙撃される前に、胃に穴が開くっ…!」
「ククク…」
カイジの歯に衣着せぬ物言いに、アカギは思わず笑った。
「……とりあえず、ここから移動しねえか?こんな目立つところで立ち話もなんだろ…」



アトラクションゾーンの大通りから少し離れた茂みの中。
カイジは、アカギと沙織に今までの経験を、淡々と話した。
借金を背負わされ、闇金融から怪しげな船を紹介されたところから…。できるだけ客観的に、経緯のみを伝えるように…。
それでも、裏切られたことや、大勢の人間が死ぬ様を見たことを話すときには声が震えた。

考えてみれば、今までこんな話を誰かにしたことはなかった。
あまり思い出したくないことでもあり、荒唐無稽すぎて誰も信じてくれないだろうとも思っていたからであるが…。
……それでも、本当は、誰かに話したかったのかも知れない。オレの血肉、オレの歴史…。

***8

「……Eカード」
ずっと沈黙したままだったアカギが、ふとつぶやいた。

「ああ、それは『皇帝』『市民』『奴隷』の三つの絵柄が描かれたカードを使って…」
「それは、こんなカードかい…?」
アカギは、懐からEカードを取り出した。
「これ、どこで…」
「なに…島に点在するギャンブルルーム、その一つから頂いてきたのさ」
「へえ…、ギャンブルルームにはこんなカードまで置いてるのか…。
……なら、変な針のついた拘束具みたいなモンも置いてあったか?」
「いや…。何だい、それ」
「さっき話しただろ…、耳を賭けさせられたって。形としてはこんな…」

カイジは首輪を指差しかけ、ふと言い淀んだ。
ふと、上着のポケットを探る。取り出したのは、少し縒れた紙切れ。
以前、首輪について思いついたことを書き、沙織に見せたメモ。
その紙切れをアカギに渡す。アカギはそれに目を走らせた。

「…ふうん、なるほど」
アカギはその紙切れを懐に仕舞いこんだ。

「役に立つか?それ…」
「ああ…」
アカギは短く言った。

***9

アカギに参加者名簿を見せ、危険人物や、知り合いに関する情報を交換した後、アカギは去っていった。
カイジはその後姿を、完全に闇に溶け込み同化するまで見ていた。

アカギは最後に、こう書かれたメモを残していった。
……『もし再び会うことがあれば、それはきっとこのゲームが幕を開けた最初の場所でだ』と。
カイジはそのメモをポケットから取り出し、反芻した。この言葉が持つ意味…、それは、とどのつまり…

「…………カイジ君」
沙織が少し咎めるような声を出す。
「……はい」
ばつの悪そうな顔で返事をするカイジ。

「無茶しないって言ったわよね?もう…急に飛び出すなんて…」
「…………目が合ったんだ」
「………」
「アカギが振り向いた。こちらに敵意がないと感じて、そのまま行こうとした。
つまり、それは向こうにも敵意がないってことだ」
「……………そんなの、わかる訳ないじゃない。結果的にうまくいったからって…」
沙織はため息をついた。

(……………そうでもない)
不思議な感覚だった。
命懸けの勝負で、ギリギリまで張り詰めている時なら、感じることはあった。
敵…戦っている相手の感情…思考…。それを読もうとして…観察して…対峙して、ふと感じるもの。
だが、ただ歩いている人間に対して……

(……………もしかして)
あの男は、常にそんな感覚を身に纏っているのだろうか。

***10



月。 満月。
光は降り注ぎ、木々の下に影を作る。
月明かりの中、深い静寂の中、恐れることなく、物陰に隠れようともせず、大通りを堂々と歩く一人の男。
沈黙。時折、微かに風が葉を揺する音。

アカギはふと、空を仰ぐ。
じきに、時は満ちる。
だが今は、昼間の月のように静かに、密かに行動する。自身の目的のため…。主催者との戦い、圧倒的勝負っ…!
『全てを燃やし尽くすような業火の中に、この身を躍らせる』ために…!

さっきの男。
思っていたよりも面白い奴だった。だが、相容れない。
向かう先が同じでも、性質は全くの逆…。光と闇。

(だが、それでいい。同じである必要などない)
アカギの死生観。
生と死は表裏一体ではない、という考えと同じく、光と闇も、繋がっている。同一線上にある。

奴は、仲間を集めて集団で主催と対峙するつもりなのだろう。
だからオレに名簿を見せてきた。参加者の情報を集めるために。

そして、オレの戦略は逆…。一人、主催の内部に潜り込む……。
主催の思惑の外からの攻撃…。別領域からの刃…!

***11

【D-3/アトラクションゾーン/夜】
【赤木しげる】
 [状態]:健康
 [道具]:五億円の偽札 不明支給品0~2(確認済み)支給品一式
 [所持金]:600万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す。死体を捜して首輪を調べる。首輪をはずして主催者側に潜り込む。

※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※五億円の偽札
五億円分の新聞紙の束がジェラルミンケースに詰められています。
一番上は精巧なカラーコピーになっており、手に取らない限り判別は難しいです。
※2日目夕方にE-4にて平井銀二と再会する約束をしました。
※鷲巣巌を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※鷲巣巌に100万分の貸し。
※鷲巣巌と第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。
※首輪に関する情報(但しまだ推測の域を出ない)が書かれたメモをカイジから貰いました。
※参加者名簿を見たため、また、カイジから聞いた情報により、
帝愛関係者(危険人物)、また過去に帝愛の行ったゲームの参加者の顔と名前を把握しています。
※過去に主催者が開催したゲームを知る者、その参加者との接触を最優先に考えています。
 接触後、情報を引き出せない様ならば偽札を使用。
 それでも駄目ならばギャンブルでの実力行使に出るつもりです。
※危険人物でも優秀な相手ならば、ギャンブルで勝利して味方につけようと考えています。
※カイジを、別行動をとる条件で味方にしました。

***12

【D-3/アトラクションゾーン沿いの林/夜】

【伊藤開司】
 [状態]:足を負傷 (左足に二箇所)
 [道具]:支給品一式×2、果物ナイフ、ボウガン、ボウガンの矢(残り十本)
 [所持金]:1000万円
 [思考]:身を隠せる場所を探す 仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
      一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒
      赤木しげる(19)から聞いた情報を元に、アカギの知り合いを捜し出し、仲間にする
※平山に利根川への伝言を頼みました。
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。
※アカギのメモから、主催者はD-4のホテルにいるらしいと察しています。
※アカギを、別行動をとる条件で仲間にしました。

【田中沙織】
 [状態]:健康
 [道具]:支給品一式(ペン以外)、サブマシンガンウージー 防弾ヘルメット、参加者名簿
 [所持金]:7800万円
 [思考]:カイジの足の手当てができる場所を探す 仲間を集める 森田鉄雄を捜す
      一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒

こんな絵描いてた

ら朝になった…
R18とかじゃ全然ないけどバトロワ用に描いた絵なんでアドだけ
http://www.geocities.jp/aoikitai501/kaiji/batorowa.html

とうとう…

またバトロワSS書いてました。とうとう殺っちまったお…
これも含めて今まで5本書いてますが、人が死ぬ話は初めて書いた。
やっぱ重いな。うん。

というわけで、苦手な人は読まんで下さい。
あと最近スレが荒れ気味なので、スレ自体には書き込みしにくい空気になってしもてます…
みんな福本作品が好きなだけに、またバトロワスレが好きなだけに、(中には便乗して荒れるレスつけてる人もいそうだが)好きだという気持ちはおなじなだけに…喧嘩は辛いのう。

以下反転で読めますがくれぐれも苦手な人は読まんで下さい。


「人間」

***1

有賀はニタニタと笑いながら、沙織に向かって銃をちらつかせる。
「さあ…早く逃げなよっ…。何をためらってるの…?」

カイジは絶望感に苛まれていたが、ふと、ある違和感を覚える。
(こいつ…本当に、田中さんを逃がす気があるんだろうか…?)

ヘルメットの奥にギラギラと光る二つの瞳。
愉悦を堪えきれず醜くつりあがり、ゆがんだ口。
ふと既視感…そうだ…これはあの時…。
ゴールの…希望のはずの窓……だが、悪寒…。薄暗い窓の向こうにほの見えた、暗い期待……
(駄目だ……窓を開けちゃ駄目だっ… 佐原…!!)

「…カウントダウン、するよ…?10…」
「待てっ…」

カイジはよろよろと立ち上がった。
銃弾を2発受けたのは片足…左足をかばうようにして、無事な右足でなんとか立ち上がる。

「あんた…本気で、片方は逃がすつもりでいるのか…?」
「…なんだ、まだ立ち上がる気力が残ってたの……」
有賀はカイジのほうに改めて銃を向ける。

「そうだよっ…!一人は逃がしてあげる…!うふふ、うふふっ…!」
「なら…銃を降ろせよ…俺はこの通り逃げられねぇし、攻撃もできねぇんだ…田中さんが逃げる間くらい、銃を降ろしてくれねえか…。
そんなんじゃ田中さんも安心して『背中を向けて』逃げられねぇっ…」
カイジは話しながら、足を引きずり、少しずつ沙織をかばうように…有賀と沙織の間…直線に割って入るように移動した。

***2

考えろっ………。
もし仮にここで死ぬことになっても…。
いや、死なねえっ…最後の一瞬まで、『俺』は死なねえっ…!
何かないか… 考えろっ… 考えろっ…!!

有賀と話しながら、カイジは必死に考えを巡らせていた。
もう体の震えは止まっていた。足の痛みのおかげで、むしろ体中の感覚が冴えてくるのを感じていた。
絶体絶命、ほぼ必ず死ぬであろうこの状況で、ならばせめて、自分らしくいるっ…!
『俺』まで明け渡さない…!

有賀を睨みつけながら、必死で言葉を紡ぎ出しながら、カイジは考えていた。
何かないか…!

「なぁ…頼むよっ…銃を降ろしてくれ…数秒の間だけ…」
「うふふ…クク…何言ってるの…?そんなに…早く、殺されたいの…?
指図すんなよ…!体の端から順に穴を開けてやろうか…?
すぐには死ねないよ…それとも、本望かな…頭と胴が無事なら数分は生き延びていられる…ウクク…!」
有賀の脅しに、強気のカイジもさすがに怯む。
その表情を見て、有賀はますます口の端をつりあげる。

絶望…ひたすら絶望…!

駄目だっ…何も…何も思いつかねぇ…!
死ぬのか…!
ここで二人とも…!

***3

「ねえ…」
ふと、カイジの後ろに立ち尽くしていた沙織が声を発する。
「やっぱり…私も…殺すの…?」

「うふふ…殺さないよっ…殺さないっ…」
「ねえ…お願い…助けて…何でもするから…」

沙織は涙声だった。
沙織の声を聞きながら、カイジはもどかしい思いに駆られた。
彼女は冷たい人間…だからって、死んで欲しくない…!

「うふふ… 何言ってるの…?」
「ねえっ…私だけでも助けて…何でもするからっ…死にたくないの…あなたの言いなりになるから…」
「………いらないよ、別にいらないっ…」
「お願い…!役に立つわ…私をおとりにして人をおびき寄せれば、もっと人殺しができるわ…」
「……………」

有賀と沙織のやり取りを聞きながら、カイジは背筋が凍るような感覚に襲われた。
そこまでして助かりたいのか…?わからない…全く理解できないっ…

「私が、同行中に不意打ちでもすると思っているの…?
なら…私の両手をその銃で撃って…手負いにすれば、私はもう何も抵抗できない…」
「フフ…狂ってるね…あんた…狂ってる…!そんなに生きていたいの…」
「死にたくないもの…!お願い、私の命だけは助けてっ…!」

***4

沙織は泣き叫ぶように言った。
有賀はそれを見てニヤニヤと笑いながら、ふと考えた。
生に対する執着…ここまでの奴は初めて見た…!
今まで、女子供をたくさん殺してきた…。
みんな、心躍るくらいに泣き叫び、哀願してきた。
それこそ何でもするからと、自ら服を脱ぎだすような女もいた。
だが… ここまで生に執着する女は初めて……
(こいつを…どこかの建物の中で縛りつけ…端から順にナイフで開いていったら、楽しいかな…?
開くたびに哀願…死にたくないと…許してくれと泣き叫び…もうしないと言って安心させて…、
またもうひとつと…傷をつけていき…再び絶望に染まる顔を眺めたら楽しいだろうか…?)

有賀はこらえきれない笑いをかみ殺し、沙織に言った。
「…何でもする…?」
「ええ…何でも…何でもする…!」

沙織の発する言葉はほとんど悲鳴に近かった。
「そう……なら、君を一緒に連れて行ってあげる…。
君のお望みどおり、両手を撃ってあげるっ…」

有賀は沙織が見える位置まで少し左にずれ、沙織に銃を向けた。

「ま…待って…。このままじゃ体にも弾があたってしまうわ…
お願い…、両手を挙げて…少しだけ近くへ行くから、的を外さないようにして…お願いっ……」
「…クク…」

***5

沙織はゆっくりと両手を挙げ、少しずつ有賀に近づいていった。
そのとき、カイジの横を通った。
カイジが呆然とこちらを見ているのが視界の端に映ったが、沙織はカイジに一瞥もくれず、そろそろと有賀に近づいていった。
足が震える。恐ろしい。立っているのもやっと。
殺人鬼。恐ろしい。恐い。だけど、殺されるのは嫌…もっと嫌…

有賀は、沙織の怯えた様子を愉しげに観察していた。
目に涙をためて、恐ろしさのあまりこちらを向かず、ふらつく足元を見ながらゆっくりと歩いてくる。
とても飼い慣らしやすそうだ…本人の言うとおり、少しの間なら奴隷として使ってやってもいいかもしれない。
…少しの間だけなら、ね…うふふ…!


有賀は油断していた。
ふと、銃を持つ手元に目をやった。



そのとき、一閃っ………………!!!

「グワッ…!!」
一瞬、何が起こったのか有賀には分からなかった。
左目に鋭い衝撃……!
「!?」
反射的に銃を構えなおそうとする…その刹那、視界が真っ赤に染まった。


      何   が 起

***6

カイジはその瞬間をはっきりと見ていた。
有賀がふと手元に目をやった…その瞬間、沙織の右手が振り下ろされた。
有賀は奇声を発して左目を手で抑えた。
有賀の指の隙間から、沙織は何かを勢いよく突き刺した。
沙織の左手は相手のヘルメットの淵をつかみ、右手は何か細い棒のようなもの…
それを、有賀の指の間から突っ込み、根元まで押し込んだ。
有賀の指の間から、赤いものが流れ出した。
血だ。
鮮血はボタボタと垂れ落ちた。
有賀の銃はあさっての方向に向き、弾を放出した。
バラバラッと数発。
ゆっくり、有賀は膝をつき、倒れこんだ。
まるでスローモーションのように。




 真っ赤な視界の中で、カイジって奴と女が鮮血を飛び散らせて倒れこむのが見えたんだ…
 愉悦… 愉悦… 興奮… 愉悦…

 愉しい…人を殺すのは、こんなにも愉しいっ…!
 うふふ… あはは………  は……          は


***7

カイジはゆっくりと、足を引きずりながら沙織に近づいていった。
沙織は、有賀の死体のそばで座り込んでいた。
「……田中さん…」
「……………」

返事がない。
うずくまったまま、肩が時折震えるのが見えた。

カイジは有賀の死体を見た。
有賀の横顔。左目に深く突き刺さっていたのは…見覚えのある物。
普段は筆談用に使っていた、通常支給品のペン。

カイジは足の痛みをこらえながらしゃがみ込み、沙織の肩に手を置いた。
沙織は嗚咽を漏らした。恐怖でも怒りでもなく、ただ悲しみが伝わってきた。

「……っく……っ……………ううっ…!」
「田中さん」
「……う……うう……!殺した……私……人殺し………殺した…!」
「田中さん、俺もだ」
「……………」
「この状況ではこうするしかなかった」
「……………」
「二人で殺したんだ…」
「……………」

***8

「……ありがとう」
「……自分のためにやっただけよ」
「それでもいい…助かった」
「………あなたが、『この殺人鬼は二人とも殺すつもりだ』って教えてくれなかったら、一人で逃げてたわ」
「……………」
「でも……あなたは……最後まで、私を庇おうとしていたでしょう………」
「……………」
「一人なら、とてもこんな度胸なかったわ……。
一人なら……、自分だけが助かりたければ、目先の安全しか見えない…。
だから、…きっと殺されてたわ……………」
「………ありがとう」
「………お礼を言われるようなことじゃないわ…」
「人間らしくいてくれて………、ありがとう」

沙織はカイジのほうに目を向けた。
沙織の目から、涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。


……………………


***9

しばらく経って、沙織は深呼吸をした。
「行きましょう」
カイジは頷いた。

「こいつの荷物も持って行きましょう…マシンガンは使えるわ」
「ああ」
「あと、どこか隠れられるところに…、足の手当てもしないと」
「うん」
「歩ける?」
「…なんとか、ゆっくりなら」
「幸い…日も落ちてきたし、見つからぬよう…音を立てないように注意して移動すれば、なんとかなるわ、きっと」

二人は荷物をまとめると、ゆっくりと歩き出した。

***

【C-4/アトラクションゾーン/夜】
【伊藤開司】
 [状態]:足を負傷 (左足に二箇所)
 [道具]:支給品一式×2、果物ナイフ、ボウガン、ボウガンの矢(残り十本)
 [所持金]:1000万円
 [思考]:身を隠せる場所を探す 仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
     赤木しげる、一条、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二に警戒
※平山に利根川への伝言を頼みました。
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。

【田中沙織】
 [状態]:健康
 [道具]:支給品一式(ペン以外)、サブマシンガンウージー 防弾ヘルメット、参加者名簿
 [所持金]:7800万円
 [思考]:カイジの足の手当てができる場所を探す 死に強い嫌悪感 森田鉄雄を捜す
     赤木しげる、一条、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二に警戒

【有賀研二 死亡】
【残り 29人】

長文なった…

冬コミの準備もほっちらかしでまたバトロワSSかいてた。
4作目。遠藤と森田と南郷。

※注意※
SS=サイドストーリーのこと。
バトルロワイアルSSなのでキャラ同志が殺し合いしてます、苦手な人注意。
以下反転で読めます。リレーSSなのでこれだけだと良くワカランと思います。
興味もたれた方はまとめサイトへ…
http://www31.atwiki.jp/fukumotoroyale/

「手足」

***1

南郷は棚を背に蹲ったまま、居心地悪そうに僅かに体を揺すった。
視界に入るのは薄暗いフロアの天井、その下にはひしめくように並んだ夥しい数のパソコン。
自分の斜め前には背を向けて座りこみ、しきりにぎこちない動作でパソコンを操作する長髪の男。
そして、数歩離れたところで、それを眺めるともなく見ているサングラスをかけた男。

少し前にここに連れてこられ、一時安堵はしたものの、手持ち無沙汰…。
何もしないでいると、今の現状…殺し合いゲームの最中…非常時であるにもかかわらず頭がぼんやりとしてくる。
静か過ぎるのだ……、ここは。
…いっそ夢であったら、と南郷は考える。
眠りが浅いとき、何かしら気がかりがあるときに見るとりとめもない夢なのだ…これは。

だが、時折疼く左腿の痛みが、『これは夢ではない、現実なのだ』と南郷に自覚させる。

アカギ。

このゲームが幕を開けたとき、ホテルの会場で真っ先に名を呼ばれ、
特に気負う様子もなく、平然と外へと続く扉を出て行った背中。
…この地獄へと…。

(…お前なら、俺の考えもつかないような方法で…この苦境を進んでいくのだろうな…。
…おそらく…挑むは…このゲームの主催…。主催者側の掌の上で転がされている、今の現状に甘んじているような奴じゃあない…。
むしろ…いつのまにか、奴の思惑がこのゲームを…)
ここまで考えて、南郷は目を瞑り、息を吐いた。
(俺には考えもつかないこと…これ以上は想像が追いつかぬ…。)

***2

………時は数時間前に遡る。

南郷の存在をモニターで確認した森田は、それから一時間ほど自分の行動を決められず煩悶していた。
自分はこんなにも優柔不断な性格だったか、と自己嫌悪した。
…だがしかし。『行動を決められない』ということは、『危険ではない』ということ…
…そう、森田の直感が告げていた。

危険が迫っているとき、森田は即状況に対応できる。
否、対応しようとして動けば、たいがいは…後から冷静に省みて、それがよりよい行動であった、ということになってしまう…。
森田にはそんな経験が何度もあった。結果論といってしまえばそれまでだが…。

それをあの人は、『強運』と呼んだ。
…もしくは、『翼』だと。

…そのおかげで、自分ひとり生き残ってしまう…救いたい者は救えず…

(………………くそっ!)
森田は舌打ちした。
一時間たち、コンピュータからピッと小さく電子音が響く。
『南郷』はまだショッピングモール内…大まかな地図でわかりにくいが、一階にいるとすれば、建物の入り口近くに留まっている。
何かあったときに…別の人間が来たときに迎え撃つためなのか、もしくは即座に逃げるためなのか。

(……コイツはたぶん、危険人物ではない…俺の直感がそう告げている)
森田はモニターを睨みつけながら考えていた。
(…コイツとの合流…それはもう決めている…。問題は、『ここからどう動くか』だ)

***3

森田はこの一時間でさまざまな状況を想定し、その上で、自分のこれからについて考えていた。
先ず、自分一人がここから動いて南郷に会いに行くことは考えられない。
パソコンはここから持ち運べないのだ。コンセントを抜いて運ぶのも、フロッピーだけ抜いていくのも駄目…。
このパソコンは『危険探知機』なのだ。
起動したままの状態でいなければ、危険を…今の状態を受信…即座に察知できなければ、この支給品を持っている意味がない。

…だが、遠藤一人に行かせるのも難しいだろう。
『危険探知機』の傍にいれば安心できるのは遠藤も変わらない。
そして、おそらく遠藤も、武器として使えそうな道具を持っていないのだ。…少なくとも俺にはそう装っている。
…否、安全かどうかはともかく、遠藤は俺に手駒として使われることをよしとしないはずだ。
むしろ、俺を…遠藤の思うように動かしたいはず…。
遠藤に頼んでみても、得意の口八丁でのらりくらりとかわされるのは目に見えている。
俺自身、強力な武器がないので、それをちらつかせて脅すこともできない…。

そうなると…いっそ二人で行動すること…。
『探知機』から離れるリスクを冒すなら、二人で行動し、『南郷』に近づくほうがまだいい…。

そこまで考え、遠藤に言葉をかけようとして、また少し考える。
「どうしようか?」なんて『相談』するのはもってのほか…。遠藤は『仲間』ではない。
いつ敵に回ってもおかしくない、ただの同行者だ。
こちらから判断を仰ぐようじゃ、自分が格下だと相手に公言するようなもの…。
だから、「こうしよう」なんて『提案』する…そんな生ぬるいやり方でもだめだ。

***4

「遠藤」
声をかけると、参加候補者名簿をまた端から読み返していた遠藤が、大儀そうに「ん?」と顔を上げた。

「なんだ…何か状況が変わったか?」
「南郷って奴がまだこの建物の中にいる。接触して、もし殺し合いに乗ってないなら俺たちと同行させる」
森田は命令口調にならない程度に言い切りの形をとった。

「二人で行くぞ。二人なら相手も警戒して、そうは襲ってこないはずだ」
「………。わかった」
遠藤は意外とあっさりと森田の言葉の聞き入れ、腰を上げた。

「パソコンから離れなきゃならないが…。それは仕方がない」
「…ん?それならそっちのノートパソコンにフロッピー入れ替えりゃいいだけじゃねえのか。そこの黒いモデルのなら軽いし」
「…え、でもコンセント外して持ち運ぶんだから、同じだろう…?」
「………充電式だから外してても起動させられるぞ」
「…そうなのか?」
「………お前、ホントにパソコンのこと知らねえんだな…」
遠藤は呆れ顔で言い、森田は少しばつのわるそうな顔をした。
(悩んでたあの一時間は何だったんだっ……。)

「バッテリーは3時間くらいしかもたねえだろうがな…。今はそれで十分だろ」
遠藤は慣れた手つきでフロッピーをノートパソコンに差しこみ、起動させた。

***5

「ほれ。じゃあ行くぞ」
遠藤に促され、森田は緊張の面持ちで止まったままのエスカレーターを下る。
南郷を警戒してはいないのか、遠藤は特に身を隠そうともせずスタスタと歩を進める。

…そうして、遠藤と森田は、一階の入り口…『インフォメーションセンター』と書かれた看板の下、
設置されたカウンターの影で、足を押さえて蹲っている南郷を見つけた。

遠藤が警戒しないのも無理はない、と後で森田は納得した。
南郷は、知り合いに会えて助かったと言わんばかりに安堵の表情を浮かべ、自分の持ち物を全部遠藤と森田に晒して見せた。
自分は大した武器を持っていないから安全だ、と言いたかったらしいが…、もし俺たちが殺し合いに乗っていたらどうするつもりだったのか。
まあ、それはそれとして…。森田は南郷の持っていた支給品を見て、こう評価した。
「この麻縄やパチンコ玉は使えるな…」
「え?…そうか?」
「トラップとして役に立ちそうだし…、例えば、パチンコ玉を滑りやすい床にばらまいたら、不意打ちでやれば敵を転ばすことくらいはできるかも」
「おお、なるほど…」
「麻縄は、捕まえた敵をふんじばっておくことができる…」

言いながら、森田は考えていた。麻縄のもう一つの使い道…。
凶器としての使い方…。後ろから…相手の首に絡ませて…。
だがしかし、それは言わないでおいた。万が一にもそんな使い方はしたくない。

***6

「…ところでアンタ…森田って言ったっけな。アンタの持っているそのパソコンは?」
「…ああ、これは俺の支給品…。パソコンに挿しているフロッピー…。このプログラムで、参加者全員の位置を確認できる」
「へえ、便利なもんだな」
森田は正直に言った。同行するのだからいずれは話さなくちゃならない。

「…参加者の位置が分かるっていったな」
「ああ…、なに、今このエリアにいるのは俺たちだけ…今のところ危険はない」
「うん、いや、一人…位置を教えてほしい人物がいる」
「ん?」
「……赤木しげる…は、今どのあたりにいる?」

午後からモニターを見ていたが、赤木しげるは積極的に移動していた。
一時間おきに画面が更新されるたび、参加者の位置は必ず目を通していたが…。
赤木は島の中央から南下していっているようだった。どこか目的地を目指しているといった動きだ。
『参加者候補名簿』を見る限り、…これは参加者の過去、経緯を簡単に記してあるだけの代物だが、
赤木しげるという人物はそれなりに危険な人物のようだった。
…物心ついた頃から、その筋では有名なやくざや暴力団との関わりをもちながら、どの組にも組み込まれなかった人物。
それだけ危ないと言うか、一筋縄ではいかない人物ということだろうか。…まだ20歳にも満たないこの男が。

***7

「赤木しげるは…今はE-4だな…。2時間前にはD-3にいた」
「…そうか」
「知り合いか?」
「ああ…。俺の命の恩人でもある」

南郷は、言いながらどこか可笑しい気分にもなった。
赤木が…あの嵐の夜、俺を助けたのは成り行き…、
その上奴は、俺の命…300万の勝ちを元にさらにヤクザにケンカを売ったのだ。

「………。この男は…殺し合いに乗ってそうか?」
「いや…何と言っていいか、表現できねえが…。殺し合いに乗るとか、乗らないとか、そういう枠には嵌まらないんだ、この男は」
「は…?」
「…でもまあ、敵になりえなければ大丈夫…。赤木にやられることはねえ…」
「………? どういうことだ…?」
南郷はそれきり押し黙ってしまった。

(できることなら合流したいが…。今の俺じゃあ…。)
南郷は傷ついた足に目を落とし、息を吐いた。

(今奴に会っても足手まとい…。)

***8

………そうしてまたしばらく時間がたった。
南郷が赤木のことで色々考えをめぐらせていたとき、森田が発した小さな声で現実に引き戻され、
そちらに目をやった。

「また誰か近づいてくるな……」
「………どいつだ?名前は…」
遠藤が、閉じていた参加候補者名簿を再び開きながら、森田の傍に寄っていった。
「佐原、という奴だ。もう建物のすぐ傍まで来そうだ」
「佐原か…!」
「…遠藤、こいつも知っている奴なのか?」
「ああ…。まあな。」
「………こいつは、どうだ…?」

森田は遠藤に問いかけた。
どうだ、とは無論、『殺し合いに乗りそうな人物かどうか』である。
遠藤は少し考え、言った。
「殺し合いに乗ってない、とは言い切れねえが…、人を難なく殺せるほど度胸のある奴じゃあねえな」
「………遠藤、アンタが話してみたら、こいつを同行人にできそうか?」
「…まぁ、話はできるだろうが…」
「遠藤、この佐原って奴が建物に入ってきたら、アンタ一人で会いに行ってくれないか?」
遠藤は、モニターから顔を離して森田の顔を見た。

***9

森田は賭けに出たのだった。
遠藤に、俺の言葉で行動するように仕向ける…そのための第一歩…!
「遠藤、アンタは人を見る目がある。」

森田は何気ない風を装って遠藤をそんな風に評した。
南郷と接触し、難なく取り込めたのも、遠藤がいたからこそ…。
「佐原と話をしてみて、こちらにつくよう誘ってくれ。
…で、もしそいつが裏切りそうな匂いをアンタが感じたら、一階にそいつを待たせておいて、三人で襲撃する」
「……………」
「といっても命まではとらねえ…ふんじばっておいて、そいつの武器を奪うのと、有益な情報を引き出す。
…だが、問題ないようなら、仲間として同行させる。」
「…なるほど、先ず見極めて、その後の動きのために…最初、『ここには俺と奴しかいない』って風に見せかけるわけだな」
「そういうこと…。この役、一番の適役はアンタだ」
「…俺のリスクが大きいな」
「そうだな。」

森田はそっけなく言った。遠藤は立ち上がり、鼻を鳴らす。
「…ふん。だが…森田。もし俺が裏切ったらどうする?」
「………」
「俺が佐原と合流し…、佐原が強力な武器を持っていて…、アンタらを襲撃するかも知れんぜ」
「アンタはそんなことはしない」
「………クク」
「しないさ。今俺達を殺したところで、大して状況が好転するわけでもない。もし殺すとしたら…、
もっと終盤…。そうだろ?」

***10

遠藤はニヤリと笑った。
そもそも、『襲撃するかもしれない』なんて、本気で考えてる奴が今ここで言うわけがない。
軽口だ。
だが…、その言葉の裏には、今の俺達の関係…、それがわかっているかどうか確かめる、という真意が隠されている。
(満点の答えだろ?遠藤……。)
森田も口の端を持ち上げ、遠藤に向かって笑って見せた。

佐原が建物の中に入ったのがモニターで確認できたら、遠藤に動いてもらう。
森田は時計を見ながら、その機を待った。あと30分程度で次の情報が来る…。
距離からいって、もし佐原が建物の中に入ってくるつもりなら、ちょうど入ってきたところを狙って遠藤に動いてもらえるはず…。


森田は、この島に来てからずっと…平井銀二のことを考えていた。
本当は、このフロッピーの中身を確認したときから…、銀さんの現在位置がわかったときから、すぐにでも飛んで行きたかった。
銀さんの助けになりたかった。
だが、それはやめた。

今の俺はまだ何も『助け』になるものを持っていない。
強力な武器を持っていたらまだ助けになるかもしれないが…、いや…、
今俺は、もしかしたらそれ以上に重要といえる支給品を持っている。

***11

俺にこのフロッピーが支給されたのは何かしら意味がある…。
きっと、今見えている以上のことが…、このゲームに関する重要な意味…。
しかしそれを使いこなせていなければとても助けることなどできない…。銀さんを…。

銀さんが立ち向かうのはいつも…強大な権力者……!
つまり……本当の敵は『参加者』などではないっ…!

このゲームの綻び…、それを見つけるまでは…俺は『単独行動』をとる……!


【D-7/ショッピングモール/夕方】
【森田鉄雄】
 [状態]:健康
 [道具]:フロッピーディスク 不明支給品0~2 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:後々、銀二の助けになるよう準備をする このゲームの隙を見つける 遠藤に手足として動いてもらう

【遠藤勇次】
 [状態]:健康
 [道具]:参加候補者名簿 不明支給品0~2 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:森田を利用して生き延びる 佐原に声をかける

【南郷】
 [状態]:左大腿部を負傷、低度の精神疲労
 [道具]:麻縄 木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:生還する 赤木の動向が気になる

ネームとかゲンコにつまるとSS書きたくなる

今回、3本目は佐原。この人バトロワスレで大変なことになってます。
毎度のことながら注意。

※注意※
SS=サイドストーリーのこと。
バトルロワイアルSSなのでキャラ同志が殺し合いしてます、苦手な人注意。
以下反転で読めます。リレーSSなのでこれだけだと良くワカランと思います。
興味もたれた方はまとめサイトへ…
http://www31.atwiki.jp/fukumotoroyale/

「焦燥」
***1

「…ぅあ…、あああっ…!!」
佐原はその場に崩れ落ち、頭をかかえて蹲った。
取り返しのつかないことをしてしまった…その後悔、焦りっ…!

佐原にはわかっていた。失ったのは…「仲間」だけではない…
同時に「信頼」も失ってしまった…!
板倉と…板倉がかばい、連れ去った女…そいつらの心にはっきりと刻まれたであろう…
俺が非情な裏切り者だと…!

俺自身が『殺人鬼』であれば、この状況、別段どうということはない…
だが…俺はそんなにあっさり人を殺せるようなタマじゃない…!
今後、殺し合いで人数が減り、そんな中…もし悪い風評を流されれば…

板倉は『対主催』の同志を集めている…あの男ならうまく人数を集めるに違いない。
もし数日経ち…『対主催』と『殺し合いに乗っている者』との戦争にでもなれば…
俺は『対主催』の仲間に入れない…!「裏切り者」だから…!
むしろ…危険人物として、命を狙われる…!
ましてや、『俺が狙撃手としての腕がない』ことは今の発砲で板倉にばれてしまっているっ…!
警戒されない…あっさり殺されてしまう…!

佐原は頭を抱えたまま呻き声をあげた。

***2

実際には、佐原の考えは悲観的にすぎる。
掠めただけとはいえ、弾は命中しているのだ。もちろん佐原はそれを望んでいなかったわけだが。
的になった方からすれば、『狙撃手としての腕がある』と認識するだろう…。
だが…佐原はそこまで頭が回らない…。
初めて銃を使ってみて…こんなに扱いにくいものだとは思ってもみなかったから…!
その現実に縛られる…!

もう一つ…、「裏切った」ことにより自分が排除されるという幻想…恐怖…
その恐怖も、この『殺し合いゲーム』という舞台…特殊事情から考えると、被害妄想に過ぎるといえる。
どこで誰に襲われるかわからない…他人を信用できない…。
『日常』と切り離されたこの島…、舞台では、「裏切り」などよくあること…。
異常こそが正常…!


だが…、佐原は、一般人としての正常な感覚を持ちすぎていた。
ゆえに…孤立することへの本能的な恐れがあった。
今までは意識したこともなかった。が…、今は縛られる…その幻想に…!

***3

「……あ、ああっ…!?」
恐怖に支配され、蹲っていた佐原だが…、もう一つ思い当たることがあり、再び大声をあげた。
ここにいたら危ない…!!板倉…そして仲間になった女が…俺を狙ってくるかもしれない…!
板倉は銃の類は持っていなかったようだが、あの女はわからない…!
もし奴らが…『不穏分子…危険な芽は早いうちに摘んでしまおう』などと考えたら…
襲ってくるっ…!?今にも…こうしている間にも…!

心が恐怖に侵食され、過敏になった神経は窓の外の風の音にも反応する。
自身がたてる足音にも怯える…世界が音を立てて歪む………。

いてもたってもいられなくなり、考えもなしに佐原はホテルの部屋を飛び出し、外へ…
玄関から外へと飛び出し、板倉やしづかのいた方向とは逆の方角へと走り去った。

とにかく少しでも安全なところへ…!少しでも見つかりにくいところへ…!
できれば身を隠し…長時間待機できそうな建物の中に…!


どれくらい走ったろうか。
ふと木々の向こうにショッピングモールの建物が見えた。

【E-6/道沿い/夕方】
【佐原】 
 [状態]:恐慌状態 首に注射針の痕
 [道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:己のミスに対する深い後悔と絶望、板倉としづかに自分が狙われていると妄想
      一条を血の痕から見て危険人物と認識



 もう一つ…福本風吉野家。
 ネタが古いとか言いっこなしっ…!

「うし…野屋」

昨日…行った…近所の吉野家に…!
そうしたら…人が大勢いるっ…座れないっ…!
よく見ると…垂れ幕…そこには大きく…牛丼150円引きの文字……!

アホかっ…。バカかっ…!

お前らっ…、150円引き如きで…普段来てない吉野家に来てんじゃねーよっ…ボケがっ…!
150円…150円だとっ…!? 確かにその数字は魅力的… だがっ…!

親子連れまでいるっ…なんだこの空気っ…一家4人で吉野家だとっ…おめでてえなっ…!
「よーしパパ特盛頼んじゃうぞー」、とか言ってる場合かっ…見てらんねえっ…

お前らっ…、150円やるからその席空けろっ…!
吉野家ってのは…、もっと殺伐としてるべきなんだよっ…!
Uの字テーブルの向かいに座った奴と…いつ喧嘩が始まってもおかしくないっ…!
刺すか…刺されるか…そんな雰囲気がいいんじゃねーかっ…!女子供はすっこんでろっ…!

そうして…やっと座れたかと思ったらっ…、隣の奴が、大盛つゆだくで、などとのたまっているっ…!
そこでまた切れる…切れざるをえないっ…!
教えてやるっ…つゆだくなんてきょうび流行らない…
得意げな顔して…何が、つゆだくで、だっ…!
お前は本当に…つゆだくを食いたいのかと問いたいっ…問い詰めたいっ…小1時間問い詰めたいっ…!
お前、つゆだくって言いたいだけだろっ…!
吉野家通の俺から言わせてもらう…吉野家通の間での最新流行っ…

ねぎだく…!

大盛り…ねぎだく…ギョク。これが通の頼み方だっ…!
ねぎだくってのは…ねぎが多めに入ってる。圧倒的ねぎの量…!
その代わり肉は少ないっ…圧倒的少量…!
で…、それに大盛りギョク(玉子)…。これが鉄板…最強の組み合わせっ…!

しかし…これを頼むと…次から黒服にマークされる…。そんな危険も伴う…諸刃の剣…!

素人には…お薦め出来ないっ…。
まあ…お前らド素人は…牛鮭【ぎゅうしゃけ】定食でも食っていろってことだっ…

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